2020年税制大綱不動産編
2020年の税制大綱が昨年年末に閣議決定されています。私の独断と偏見で不動産に関する主なものを上げてみました。今国会で、決まる予定ですので、まだ決定ではございません。
1、居住用財産を譲渡したときの長期譲渡所得の課税の特例等の併用禁止。
もともと居住用財産を譲渡したときの、譲渡所得3,000万円控除等と住宅ローン控除は、併用できませんでした。ところが、この制度には抜け道がありました。
住宅ローン控除の適用要件である「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。」と、3,000万円控除の適用要件である「以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。」で、入居してから3年後に売却すれば(12月31日まで)ローン控除と3,000万円の特別控除が受けれてしまうものでした。
例、2015年新築マンションを購入して、同年入居後ローン控除を受け、今まで住んでいた家を入居後3年後の12月31日までに売却して譲渡所得が出た場合。
2015年 ローン控除適用 3,000万円の特別控除適用不可
2016年 ローン控除適用 3,000万円の特別控除適用不可
2017年 ローン控除適用 3,000万円の特別控除適用不可
2018年 ローン控除適用 3,000万円の特別控除適用
2019年 ローン控除適用 3,000万円の特別控除適用不可
と、なります。
今回の改正で、上記の例である2018年の3,000万円の特別控除を使えなくなります。
もし、3,000万円控除を使った場合は、過去3年間のローン控除適用分の修正申告が必要となります。
私が思うのに、買換でローンと自己資金だけで新規住宅を購入できる人は、かなり少数ではないかと。また、3年後の不動産相場がどうなるかもわからないのに、あえて3年後に売却するのもリスクがあり、どうしたもんかと思ってしまいます。今回この抜け道がなくなり、すっきりした感じになったのではと思ったりしています。
2、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設。
これは、簡単に言えば、個人が都市計画内区域内の低未利用土地等を譲渡したときに、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合は、譲渡所得から100万円を控除できるというものです。
では、低未利用土地等とはなんぞやということですが、低未利用土地等とは、低未利用土地又はその上に存する権利であることについて、市区町村長の確認がされたものです。また、譲渡後の利用についても市区町村長の確認がされているものを言います。
その他の適用条件です。
- 譲渡価格は、500万円以下。(建物等がある場合は、建物等の価格も含むが、特別控除は土地のみの適用。)
- 譲渡先は、個人の配偶者その他のその個人と一定の特別の関係にあるものに対する譲渡ではないこと。
- 譲渡時期は、土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日又は令和2年7月1日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの間。
- 適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地又はその土地の上に存する権利について、その前年又は前々年にこの特別控除の適用を受けてないこと。
空地として放置されている土地を活用するためのものです。おもに地方の土地活用向けのようです。
尚、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるの数え方は、所有してからお正月を6回以上迎えているかでいいです。5回だと4年になります。
3、国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の新設
これは富裕層の節税対策を排除するものです。
個人が令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得がある場合、その年分の不動産所得の金額のうち国外不動産所得の損失があるときは、その国外不動産損失金額のうち国外中古物件の償却費に相当する部分の金額は、損失がなかったものとみなされ、他の所得との損益通算ができなくなるというものです。
国外中古建物とはなんぞやですが、 簡単に言うと、国外にある投資物件で、建物の償却費を計算する際の耐用年数を下記のようにしたものです。
記
- 法定耐用年数の全部を経過した資産についてその法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数年数を耐用年数とする方法
法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数の一部を経過した資産についてその資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の20%に相当する年数を加算した年数を耐用年数とする方法
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
- その用に供した時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法(その耐用年数を国外中古建物の所在国の法令による耐用年数としていることが明らかにする書類、その使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除きます。)
国外中古建物で、上記のような減価償却を使って節税対策を考えていたかたは、ご注意ください。
4、配偶者居住権等の措置
配偶者居住権等というのは、配偶者居住権と配偶者敷地利用権のことで、相続があった時に、被相続人所有の建物に居住の配偶者が建物とその敷地を、終身又は一定の期間無償で利用できるものです。この配偶者居住権等が消滅したときの取得費のことを決めたものです。
5、所有者不明土地等に係る固定資産税上の課題の対応
簡単にいうと次の2点です。
- 市町村長は、登記上の所有者が死亡している場合、現所有者に賦課徴収に必要な事項を申告させることができる。
- 市町村が一定の調査をつくしても、その固定資産の所有者が一人もあきらかにならない場合、その固定資産の使用者を所有者とみなして固定資産税台帳に記録して固定資産税の課税ができる。
使用者を所有者とみなして、固定資産税台帳に登録されるときには、使用者に通知がくることになっています。
6、居住用財産の買換の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除制度
令和3年12月31日まで延長。
7、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度
令和3年12月31日まで延長。
8、登録免許税の軽減措置
令和4年3月31日まで延長。
9、不動産取得税に関する軽減措置
令和4年3月31日まで延長。
10、固定資産税の軽減措置
令和4年3月31日まで延長。
11、不動産譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
令和4年3月31日まで延長。
12、特定の居住用財産の買換の特例
令和3年12月31日まで延長。
ざっと、不動産関係を上げてみました。
税金の具体的な個別相談は、税理士法で税理士さんでないとできないので、税理士さんにご相談下さい。